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個人技では相当な実力を発揮するのは中学時代から変わりなく、高校に入ってからは中学での元部長稲原がもっていたセンスを凌駕するセンスを得たようだ(恥ずかしい話本人談)
「(最後なんだ。せめて前年以上にまではのし上がる)」
杉山はそう思うと、片付け始めたクラブから早くも脚を運び校舎を出た。
昔に比べ幼さが無くなったのは成長という当たり前の動きだが、やはり大人に近づいた分、心からして動けていないのが見てわかる。
そんな余裕の無い男を門である女性が止めて見せた。
「まぁ、待てよ」
「……?」
杉山はその正体を確認してはふっと鼻で笑い、歩み寄った。
「剣崎か。しばらくだな。」
「おぅ。相変わらず多忙そうだな」
「でもない。でも人生に追われてる感がたまらないな」
杉山は笑ってみせた。少し哀愁が漂っており、若いのにと剣崎は少し気を使ってやった。
「まぁそんな杉山部長に報告として、私たち三条がしばらく先のフェスタに参加することになったよ」
「ほー!やったな!って、一人のくせにか?」
今のは絶対知ってての嫌みだ。剣崎は杉山の脚を踏み始めた。
「一年生がな。素晴らしく入ってな」
「やったじゃねぇか。有望か?」
「怪物クラスばかりだな。それよか合同ででるんだが、その相手先がまた心強くてね」
杉山は何が?と言わんばかりの顔を剣崎に見せた。下校中の杉山の後輩達に挨拶を雨のようにされる中、剣崎が口を開けた。
「一条高校だ」
「無名だな。吹奏楽あるのか?」
「先日できたらしい」
「なんだ、駆け出しじゃねぇか」
杉山は軽くため息をつき、それが有望なのかと剣崎に質問したが、イエス。答えは簡単だ。
「新井千尋率いる少数派吹奏楽部だ」
杉山は突風を受けたように体を引いた。
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