曲者はいつになっても曲者。彼らの前に現るる

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夕刻を過ぎた時間帯。毎日のお決まりが経堂寺の登場イベントだ。 クラブ終了間際10分前に現れるのがいつもの決まりとなっている。 「は~い。今日もお疲れー」 経堂寺は今日は青いジャージである。健康的に見えて仕方がない。まだ若いのに。 「どーよ?順調?」 「まぁ、はぁ。あの、先生……」 「あぁ、経堂寺で良いわよ。で、どしたの神川」 「ほとんど楽譜さらい終わったんですよね」 「あたしも~」 「俺も」 「右に同じ」 「同感……」 全員が口を並べて言った。経堂寺はしばらく苦笑い。小規模団体の癖にする事の回転が早いとなると大変なのは指導者だ。 「合わせたいと」 「此処の曲は先生が指揮振るとはいえ、ほぼアンサンブルでいつでも仕上げれます。ですが他の曲が――」 進藤が言い切るまえに経堂寺が笑った。 「わかったわかった!したら明日の休みは三条に行こう……」 経堂寺はかなりの妥協をしたのか肩を落とす。 全員は経堂寺の見えない瞬間で目を合わせ「(作戦通り)」と言い合った。どうやらさっき決めたらしい。 「(明日のケーキバイキングはおじゃんか……友達に連絡しとこう……)」 経堂寺はかなりどよんとした空気を漂わせながら音楽室を去っていった。 「あら、ちょっと酷だったかしら」 神川が手で口を抑える。 すかさず進藤が首を振った。 5人も荷物をまとめ音楽室を出ることにした。
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