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「ちっ」
進藤は未知なる機械、クレーンキャッチャーに挑んでいる。しかも1人ということに対してもある意味挑みである。
小さなウサギの人形を取りに掛かっているが、真上から持ち上げようとするが失敗していた。
「この俺が出来ない訳がない」
なんの自信だ。
そこに剣山が駆けつける。
「進藤進藤。真上じゃなくてさ、こっち側の手前を狙ってみ」
「!。何故にまた」
「こうな、クレーンが開くだろ。そのまま引っ張り落とすって策だよ」
剣山が手を使って説明する。進藤は顎に手を当てフムフムと聞いている。いらぬ事で真剣になっているのじゃないのかと変に心配になる。
進藤が再挑戦する頃にちょうど全員が進藤の周りに集まった。
「右~センチ奥行き~センチ……力加減が~から~で、方向が斜めに――」
「おい衛。進藤が呪文を唱えてるぞ」
「ちげーよ。あいつなりに計算してんだろ」
進藤はボタンを押し始めた。剣山のアドバイスと自分のセンスをキッチリ使っているみたいだ。
「寸分に狂いはない」
進藤は真顔でクレーンを下ろした。すると人形はみるみるうちに転がり下に落ちたではないか。
「おぉ!やるじゃん」
神川がお褒めの言葉。
進藤は人形を下から取り出し「やった」と呟いた。
「やったってあんた。可愛いわね…」
神川がクスクス笑う。
「で、なんでそれ取ったの?」
千尋がごもっともな意見をした所でムードは やったぁムードから 何でだよムードへと引っ越しをした。
引っ越し祝いは進藤の「何故だ……」という言葉だ。
凄い虚しい空気が流れる。
「誰かにあげたら?」
神川がアドバイス。
「早川さんとかは?…ぷ」
千尋が口に手をあて笑う。
「お、いいじゃん。あげちゃえよ」
剣山が真剣に進藤の背中を押した。
「いや、でも」
「待った待った。進藤、あんた早川さんとなんかあったの?」
神川が凄く気になりますよ的な顔で進藤を見た。進藤は冷や汗がタラタラ流れる。深い意味は何一つ無いのに、らしくない行動にはひたすら恥じる進藤らしい行動だ。
そこで優しい剣山。オブラートをプレゼント。
「いやぁ、こいつデュエットするじゃん?だからこの前無理言って合わせてもらったらしーんよ。な?」
「あ、あぁ」
「でさ、そのお礼なんもしてないからソレあげたらどう?ってこと」
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