曲者はいつになっても曲者。彼らの前に現るる

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剣崎のチームである、チューバ、フルート、ホルンの異色チームだが、もちろん剣崎を筆頭に話を進めて曲を仕上げていく。 さっそく合わせた訳だが、事前にみっちり個人練習をしていて、なお元からかなりのスキルを持つ剣山に剣崎は感心していた。 「見かけによらずやるな。お前」 「あ、ありがとうございます」 「見かけによらずしっかりと曲の雰囲気を掴んでいる。さすがだ」 「確かに。見かけによらずフルートの弱いメロディーラインにすでにバランスを合わせてくれてくれるなんて。うれしいな」 三条チームが各々コメントする。 「あの、見かけよらずって……その」 「ちゃんと速度記号やら表現を読み取っている所が見かけによらずすごいぞ」 剣山が腕を組んで感心する。 「ちょ、アンタらイジメなの?ねぇ?」 「イジメがいはあるぞ」 「剣崎部長さん?誉めてるように言わないで?」 「剣山、本当に見かけによらずだな。はっは」 いつも冷静に見える奈神が笑い出した。剣山は悔しかったが、なんだか嬉しかった。 「もういいっすから!はやくやりましょ!」 「だな。じゃあもう一度Cから行くぞ」 剣崎も半ば笑いながらまた指示を出して始める。 この曲は経堂寺のオリジナルで、チューバが低音域を持ち、ホルンが刻み、フルートが軽やかなメロディーを奏でることが主題の曲だ。「陽気な酒場」という題名がついていたが、経堂寺の悪ふざけでしかない。 美味しいのはメロディーラインが途中途中で交代されていく所がいいとの事だ。
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