曲者はいつになっても曲者。彼らの前に現るる

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「相変わらず態度がでかいな。六中から変わっちゃいない」 剣崎がにやりとする。 千尋はただただ稲原を見つめるだけだ。かつての最強部長が目の前にいる。 あの人夢咲だっけ という記憶探索が始まる。 それにしても。また遠くの存在になった気がしてならない千尋だった。 俺はなにをしてるんだ。 そう自分を攻めるような思考が働き始めていた。 「まず、我々がこの音楽祭を作るという意識をもって頂きたい。生徒たちが作らねばならない責任の重さから、お客様を全力で楽しませるという演奏者の構えだ」 「いいぞ稲原!かっこいいぞ!」 「!!!」 この大演説を横から茶々入れる奴がいる。かなり大肝の持ち主な訳だが、その存在にも千尋は顎をおとす。 「ごほん。ば神埼。つまみだすぞ」 稲原の低い声で抑制がかかる。場は何故か笑いのムードだ。 「やってくれるな」 剣崎はにやにやしている。 千尋はただただに、また見ているしかなかった。 何か、懐かしい風を浴びているようだった。 涙が出そうなのをこらえる。理由はイマイチわからない。何故だろう。 そのあと、稲原代表の言葉は幕を閉じた。相変わらず稲原らしい力強い言葉だった。
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