曲者はいつになっても曲者。彼らの前に現るる

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「おそろいだなー」 そのふ抜けたような声はもちろん、杉山だ。千尋は本日3度目の驚きを見せる。 「杉山……」 「ん?何で呼び捨て?」 杉山が千尋に攻撃を加える。 千尋は久しぶりの攻撃に笑うしかなかった。 「相変わらずっすねー」 「お前はちょっと落ち着いたかな」 杉山はふっと笑うように千尋を見た。そしてそのまま稲原と剣崎に目線を移す。 「稲原。来年は永水が主導権握ってるからな」 「ほざけ」 妙な張り合いだ。あんたらもう引退だろが。 「うちの後輩は優秀だぜ?これうちのサックスパート」 後から続くように表れた男女。 女は 「松田先輩!!」 「お、千尋!やはり吹奏楽あるところに居るなー」 松田が千尋を覗きこむ。もとより綺麗な人だったが、高校2年もなれば尚美しい。とは言えど人の女だ。 「なんか感動っす」 「なんだなんだ、お前ら身内ばかりかよ」 松田に並んで出てきた男。凄まじい殺気だ。まず、髪の色が金に近い。ピアスがちらつく。とはいえ剣山とは違って殺気がムンムンと漂う。何より恐ろしいまでの切れ目だ。 「相変わらず礼儀がないな。ちょっとはおとなしくしておけ」 杉山の言葉にヘイヘイと妙な返事を返して松田の後ろについた。 「んあ?」 切れ目は千尋を見るなり「サックスだな」とズバリ当てた。剣崎を見てはホルンといい、稲原を見てはトランペットと。 「なんでわかるんすか!」 「おい、千尋」 剣崎が驚く千尋を見ては千尋の荷物を指差した。 サックスだ。 あ、なるほど。 でも何で言ったんだよ。 その時は気付かなかったが、それはそんな簡単な考察ではなかった。
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