曲者はいつになっても曲者。彼らの前に現るる

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「なんだぁ。お前は」 「清水・セドリック・大介だ」 ここでボケをかます余裕が凄い。剣山達の雰囲気を察知していないのか、ただ馬鹿なのか。 「ホルン…………それに偉く長いんだな。経歴が」 「!」 威勢を張って居た清水も今の桐山の言葉に耳を疑った。当てられている。 「ホルンは6歳から吹いてるからな。んなこた良いんだよ、鳥頭。今の、詫びて取り消せ」 清水が偉そうに桐山に指を指した。もう神川と剣山はただ見ているしかない。桐山が笑ってる以上、止める理由もない。 「ヒッヒッ。なんだ。取り消すも何も。お前等が上手く吹くか吹かないかの話じゃないのか」 「……てんめぇ。演奏家舐めてんのか」 清水の拳を握る力が強くなってきているのが分かる。 「演奏家?きっちり吹いてからいえ」 「もうお前許さん」 清水が桐山に襲いかかろうと足を踏み出した。 それを横から蹴り飛ばす進藤。 何とか清水の攻撃は止まった。進藤もさっきの顔とは違う。昔見せたような無表情だ。どうやら話は聞いていたらしい。 「いってぇ!進藤!てめぇプライドはないのか!」 「音楽の世界を暴力で片付けるプライドはないな」 進藤がそう言うと桐山を見る。 「お前、面白いな」 桐山が今の今まで見せたことのないような驚いた目で進藤を見る。 「トロンボーンか」 「それもな。ただ俺らの手を見て、楽器演奏からついた僅かな癖を見抜いてるだけだ」 桐山は面食らったように驚く。そしてまた笑う。 「生憎目が良いんでね」 「開いてないのにか?」 進藤の皮肉がこのダークな場をさらにダークにする。 「俺らが三流かしらんが、夢咲の下に敷かれてる二流の言葉じゃあまり説得力がないな」 桐山は今の言葉を聞いて形相を変えた。 「音楽の事、口に出されたからには音楽で返すしかないな。こいつら全員俺の仲間だ。総出でお前らの偉そうな面子潰してやるよ」 進藤が桐山を睨みつける。
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