曲者はいつになっても曲者。彼らの前に現るる

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「ヒッヒッ。俺らが二流なら夢咲も三流だな。ま、精々頑張れよ」 桐山は暫く沈黙を置いた後に、意味ありげな言葉を放った。が、その桐山の頭を誰かが掴む。 「誰が三流だ」 「……」 頭を掴むのは夢咲の稲原だ。いつからいたのか。 「なんだ、何もせんのか」 「しないね。音楽で分からせることが一番らしいんでね」 またキシシシと笑う。 「おい、杉山。よくこんな奴を優秀だとか言えるな」 稲原は笑いながら後ろにいる杉山に話し掛けた。長年の勘か、杉山はこの場を見て良くない雰囲気だと察して飛んできた。 「おいこら桐山。永水の名前下げるようなことしたいのか」 稲原が頭を掴み続けることは大事が起きた事を意味する。普段なら言葉で済むか殺人の舞か何かを踊るだけでいつも済むはずなのだから。 「杉山さん。さっさと終わらして帰りましょうや」 桐山は稲原の手を振り払い、杉山の前に立った。杉山は稲原を振り払えた事に感心するところだった。 「こいつらぬるい」 また一条と三条。いや、夢咲の稲原含め全員が顔をしかめた。 「すまんな。また俺から詫びさせてもらう」 杉山が無理のある笑顔を皆に見せては桐山を連れ出した。 稲原がフゥッと息をついて腕を組んだ。 進藤も似たように近くの柱にもたれては腕を組む。 「そうとう頭の中が凄いらしいな」 進藤が皮肉めいた事を言う。 「まったくだ。信じられん。あんな奴が吹奏楽してるなんてな」 清水が立ち上がり、制服をはらった。 「やかましい。吹奏楽は吹奏楽だ。人を選ばん」 進藤と清水はムッとした顔を稲原に見せる。 「あいつはあいつだ。干渉しすぎるな」 稲原はまた代表者席へと戻ろうとするが、もう一度こっちを向いた。 「勘違いするな。吹奏楽は人を選ばん。ただし、お客様は人を選ぶぞ。それに!お前らは良い目をしている。期待しているからな」 稲原はそう言っては超笑顔向こうに歩いて行った。 しばらく全員は呆気にとられる。 進藤は稲原が遠くに行ったのを見るなり剣山たちに近づいた。 「大丈夫か」 「わざわざ心配ありがとよ」 剣山がハハハと笑って立ち上がる。神川もそれを心配そうに剣山に手を添えていた。 「なんだ、知り合いか」 「あぁ」 剣山は渋るように下を見た。
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