今年の夏も気温と楽器が熱い

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**真面目なパートに入ります** 「うっめぇな、あのサックス」 千尋がシャープペンシルを口に当てながらも舞台に釘付けだ。今は最初の一校目が演奏中である。一条(進藤のぞく)はちょうど観客席半ば辺りに一列に並んでは陣取っていた。 「なんつか、ムダがない」 「口に出す前に書け、馬鹿」 左に座る北条にシャープペンシルで頭を叩かれる。千尋はとりあえずは文句言わずにノートにカリカリと書き始めた。 「しかも単純ね。中身がない」 「っせーなぁ。だって他になんてかけば」 千尋はさすがにぶつくさと北条を非難し始めた。 「ムダがない。つまりは音の始めと終わりの処理がとても上手なの。そしてさらには音は伸びがいいし、なによりサックス陣、重くないしリズムに遅れない。パートしては非常に優秀ね」 「……」 「わかった?」 「へい」 千尋はムスッとした顔を今度は舞台に向け、がっつくように見始めた。 「よろしい」 このノートにとる作業は非常に集中力を使う。聞きながら書く。それにCDのように巻き戻しはできない。そういった音を聞く集中力の練習。さらには感想をまとめる。すなわち良いか悪いかといった形に別れ始め、最終的に自分の練習内容や目標の良し悪しの判断が身につく。 北条式吹奏楽リーディングだ。 どうやら思いのほか全員集中してやらなければならない結果となり、一校目から必死である。
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