今年の夏も気温と楽器が熱い

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永水高校の演奏終了後、そのまま各校は各々の実力を発揮する演奏を続けて行く。 千尋も慣れてきたのか、何もいうことなく黙々とノートにペンを走らせる。北条もただそんな千尋を横目に見ているだけになっていた。 休憩を数回挟んだ後に全ての演奏が終了し、長い長い審査発表までの待機時間が始まる。 「(懐かしいな、この会場の静かな響きと緊張感)」 千尋は少し笑みを浮かべて当たりを見回す。 中学の時の事が頭に過る。 この時間が何よりももどかしくて、何よりやりきってしまった疲労感。体がまだ覚えている。 時間はまだあった。 他の席に座っている他のメンバーを探しに席を立つ事にした。 「おい、千尋。見ないのか」 先程まで目をつむっていた北条が眠け眼で立ち上がった千尋を見た。 「あぁ。ちょっと他のメンバー探してくる。そこで見るわ」 「んー。終わったら起こしにきてね」 なんだこの人、見る気無いのか。 だが、特別そういうわけではなさそうだ。 北条の横にあるノートに目がついた。 この人も何かまとめていたんだなと立ち上がったまま、ペンの文字をじっと見つめる。 夢咲 帝城 永水 千尋は唾を飲んだ。この三校、確かに上手かった。まさか、北条の考える地区抜けの代表校なんじゃないか。 しかし、夢咲は外せないとしても、永水含んだこの三校に絞るのは別に妥当でもなんでもない。他の可能性も当たり前にある。 この人がどんな目で耳で演奏を聞いていたのか。何を基準にこの三校を予想したのか。 少し悍ましいと感じながらも千尋は席を離れた。
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