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「さて、お前らは特別早く集まってもらったのは他でもない。トロンボーンアンサンブルは10:30スタートだからな。」
経堂寺はすでにスーツに着替え(さっきまではなんとジャージ)本番を迎える生徒たちの顧問として、成りを整えていた。
「緊張してんのかー、早川」
「い、いえ!いや、少し…」
早川はもうすでにトロンボーンを持って立っていた。その横に同じように背の高い進藤が立っている。
「大丈夫だ。練習通りいこう」
「進藤なんでそんな足震えてんの」
「心外だな経堂寺さん。俺は緊張などせん」
進藤の足は震えていた。
「あんたも緊張すんのね」
「いいから早くチューニングするぞ、早川」
「は、はい!」
二人は楽器を構え音を出し始めた。
「(参ったな。リードする側の音が死にかけてんな)」
経堂寺は意味不明な緊張で弱体する進藤を少し気にやった。練習は完璧だった。学生の域で成し遂げるには難しい楽譜にも関わらず二人ともそれを仕上げて来ている。
多分本番前には治るだろうと適当に完結させては経堂寺は水を飲んだ。
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