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「……進藤くん。さっきの人、誰?」
早川の下へと戻った進藤。もちろん早川に心配、いや何か変な疑いを持たれても仕方がないだろう。
「昔の同期」
「同期?な、なんであんなに重たい空気がながれるんですか…」
早川が手を胸の前に持ってくる。心配が体で伝わる。
「まぁ、あいつは俺の目標でもあったような奴だ。いるだろお前にも」
「同期ってことは、ないけど…」
「それが同期なんだ。俺の三年間はあいつに費やしてきたようなもんだ」
進藤はいつになく顔が強張っている。先程の緊張はすでに消えているようだ。
「なんというか…私にも少しわかる気がします」
「…早川」
早川はチューナーをポケットから取り出した。そして電源を入れて進藤に向ける。
「お待たせしましたって所ですかね。今日は進藤くんが上手くなった所を見せてびっくりさせる番ですよ」
早川はキリッとした顔で笑った。緊張と楽しさが混じったような、そんな顔。進藤はそんな早川を見て少し驚いた顔を見せた。
「私をどこの中学のトップだと思ってるんですか!」
「!」
「私達が一番素晴らしい演奏をします」
早川は進藤に先程とは違った、楽しそうな笑顔を向けた。
そこで進藤の心のモヤが晴れたようだ。
進藤はいつもの無表情に少し笑顔を足した顔を早川に見せる。
「そうだったな。さぁ、楽しもうか」
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