激闘 FMF 【姫川&山野VS進藤&早川】

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チューニングを済ませた二人はその後会場の少し手前の通路まで案内された。 すでに演奏会ははじまっており、遠くから拍手と演奏、その交互が聞こえてくる。 不思議なことに、二人は特に緊張せず他愛もない会話を楽しんでいた。 それとなくさっきから近くにいる経堂寺も二人を見て安心をしていた。 「おっし、がんばれよ」 珍しく笑顔で二人の背中を見送る経堂寺。二人は楽しそうな顔で経堂寺の方を振り向いた。 「(なーに、大丈夫。相当な人数の脳裏に焼きつく程お前らの演奏は出来上がってるさ)」 経堂寺はすっと腕をくんだ。二人は次の出番が控える舞台裏に消えた。 すると玉突きのように後ろから次の団体がくる。 経堂寺はチラッとその学校の制服に目が留まる。経堂寺は口を丸めて軽く驚いていた。 「君ら、夢咲か?」 経堂寺は笑ってその団体、いや二人に話しかけた。 「ええ、紛れもなく」 「ということは」 経堂寺が腕を組んだまま振り返る。そこには50歳程のスーツの男が立っていた。髪は白髪、綺麗に後ろに流されてピシッとしている。太い眉に鋭い目。軽く蓄えた髭がいかにも偉そうに見える。 「よっ。久しぶりだな、松風のおっさん」 経堂寺はニーっと笑ってその男を見た。 その瞬間、トロンボーンを持っていた先程の夢咲の二人は何か怖いものを見たように驚いた。
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