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真っ暗な舞台______
そこに男女が二人。
「早川、いけるな」
「も、もちろんです。進藤くん」
二人は暗闇の中、ばっちりと目を合わせて互いに笑みを見せた。
アナウンスと同時に眩しいくらいの証明が二人を照らす。
構えたのは進藤。スッと息を吸っては優しい音のロングトーン。チューニングではない。すでに始まっている。
その音は次第に音階を奏で、一つのメロディとなる。
早川は目をつむってその音を聞いていた。
進藤のそのメロディはやがてフレーズの山にかかり、そして終わる。
そこで早川も構えた。
そして劇的なアタック音のロングトーン。綺麗な和音を作ったちから強い音は会場を一気にトロンボーンの音色に染めた。
進藤は先程と同じメロディを、いや、テンポはマーチテンポよりも早く、優しさではなく活気あふれるように奏でる。
そして早川はそのメロディを支えるようにリズムを刻む。そして時には対旋律に入り、進藤のメロディに寄って奏でる。
「楽しそうだな、進藤」
「ほんとだなー。にしてもやっぱあいつは上手いよな」
剣山が客席でそうぼやくと千尋が珍しい事を呟く。剣山はそんな千尋を見て少し笑っていた。
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