理由のためだけの存在

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「用事無しかよ…」 剣山がため息をつく。少し笑っていたのでちょっと安心する千尋 「音楽関係のクラブだったからさ。まぁ苦手じゃないんよ」 剣山はまた空に体を向けて パンをかじる なにか、嫌なものを食べたような顔だった 「軽音?」 千尋が質問 立場がわからなくなってきて さらにキョドる千尋 「中学校に軽音楽はなかったなぁ。あれ、吹奏楽。吹奏楽だよ」 「え?」 なんか 意外にヒットしましたか?これ? 「お、俺も…」 千尋が自分を指さす 剣山が口をポカンとあけるような 唖然とした顔でこちらを見た しばらくして わざとらしく 「へぇ。そーなんだ」 と 興味なさげに返した 千尋は手応えがないような顔をして いきなり本題をぶつけてみる 「なぁ、吹奏楽…やらないか?」 剣山が 何の事かを頭で整理したのか、パンをくわえたまま黙る そして ああ! と言う 千尋はびっくりしてまたキョドる 「お前、校門前で部員募集してた奴か…!」 剣山がこちらに指を指してくる 「それ!なら話がはやいや!一緒に……………つくらない?」 一緒と言う 勇気のある言葉をだしたとたん 自信がなくなり最後は 小さくなった千尋 ただ、駄目でも悔いはない すると剣山は 困ったように笑い、最後の一口を食べた そしてメロンパンと書かれた袋をクチャクチャにして立ち上がる 「悪いな。もう吹奏楽はやらないんだよ………ごめんな」 そのままの困った笑い顔で去っていく剣山 千尋は 「あ、うん…ごめん」 と だけ言い ただ呆然とした なんで あんなに悲しい顔するんだ…?
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