理由のためだけの存在

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進藤はドアを開けて中を確認するなり立ち止まった。 千尋が何事かと進藤を押しのけ図書室に飛び込む。 「誰もいねぇじゃんかよ」 「何故電気が」 進藤が千尋を追い抜かすように図書室の奥へと足を進める。千尋は横にあった『動物図鑑』を目に付け読み始める。 「……」 進藤は机に開きっぱなしにされた一冊の本とノートに目をやる。普通にさっきまで誰かがいたような置き方。進藤はその本を手に取る。 「は?音楽用語辞典?」 進藤が本を片手にもう一方の手でノートを取り確認する。 「……速度記号ばっかだな」 それに興味がいったのか、進藤は本を机に置きノートを見始める。 千尋は相変わらず動物図鑑を読み、深海に生息する生物を見てビックリしている所だ。 「剣山?…………おい、馬鹿。このノート剣山の所有物だ」 「馬鹿じゃねぇ!千尋だ!」 千尋が動物図鑑をほったらかしにして進藤に飛び付く。進藤はノートで千尋をガードした。 「見ろ」 進藤がノートの名前欄にある「剣山」と走り書きされた文字を指差し千尋に見せつける。 千尋はとっさに辺りを見回し、この学校指定のカバンを1つ発見する。 「このカバンも剣山って書いてる!」 「……」 「無視すんなゴラァァ!」 進藤は飛びかかる千尋を華麗に避け、入り口からは四角になる机の前に立った。
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