理由のためだけの存在

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「コソコソと……何のつもりだ」 進藤がその机に向かって喋りかける。 「し、進藤……独り言とか止めよ」 「お前は黙ってろ。剣山、早く出てこい」 進藤が机の脚を軽く足で蹴った。机がガタンと動くのと同時に手前にある椅子がギイギイ音を立てて動き始め、机の下から申し訳なさそうな剣山が顔を出した。 「あ……はは」 剣山が笑った顔を進藤に見せるが相変わらず進藤は表情1つ変えない。 「はははは…………はぁ」 剣山は最後にため息をついて机の下から出てくる。そしてズボンについたホコリを払いまたため息をつく。 進藤は剣山の方へ顔を向け剣山と睨み合いになった。千尋はただ見ているだけだった。 「隠れる理由はなんだ」 「……なんか、音楽に関わってるとこ見られたくなかったからさぁ」 剣山が笑いながら机にあるノートと辞典を手に取り、辞典を元の場所へとしまいに行く。 「ふぅん…………おぃ、馬鹿。あとはお前がなんとかしろ」 進藤が首に手を当てながら近くの椅子に座る。 「あぁ……うん」 千尋は一度断られた勧誘を改めて此処でやることには勇気がいった。 もし駄目だったら楽器どころかクラブ事態がおじゃんだ。 一度呼吸を整え前を向く―― 本を直し終えた剣山と目が合う。
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