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「本当か?」
2人は取っ組み合いをしながら剣山に顔を向け同時に言った。
「あぁ、神川って奴。色々あって吹奏楽が出来ないこの学校に入った奴でさ……昔の部仲間だよ」
剣山は何か困ったような顔で2人に説明する。
『神川』――――見事に経堂寺の言った名前と該当する。
「ラッキー!なんだか知り合いらしいし上手く行きそうだな!」
「アホ。良く考えてみろ」
笑う千尋と剣山がいきなりの進藤の言葉に笑いが止まる。進藤が椅子をガタンと足ではねのけ立ち上がる。
「ならなんで馬鹿猿のクラブ勧誘のチラシや呼び込みで入らなかったのかを考えろ。剣山含め全員やる気がないんだよ」
千尋が何か忘れた事を思い出したような顔で進藤を見る。勿論、嫌そうな顔で。
「たしかに……俺もあの勧誘でやる気はでなかったな……」
「え?何?俺の勧誘のダメ出し?」
千尋が拳をぽきぽきならしながら怒りの形相を見せる。
「ま、楽器吹けることを条件にすれば8割だな」
進藤が手をパンパン叩くようにしてその後ポケットに突っ込んだ。
「そうだな」
剣山がそう言うと床にある自分のカバンにノートを入れて肩に掛けた。
「(なんか……これじゃあ楽器吹くためのゴロ合わせみたいじゃねえかよ……)」
千尋が少し不満を感じ、下唇を巻いて噛み締める。しかし『ある』に越したことは無いと自分に言い聞かせた。
「なにやってる。帰るぞ、馬鹿猿」
「本当に猿だな」
「うるせぇ!」
丁度その時、図書室から太陽の明かりが消え、時刻は6時を回っていた。
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