理由のためだけの存在

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進藤が急に興味を持ったのかスタスタ歩き帰ってくる。 剣山が溜め息気味に進藤を見た。 「何者だよ、お前」 「お前って何よ」 千尋と神川がいきなり睨み合いになる。何が起きたのかと剣山が中立に入り2人に訳を聞くが無視。 進藤は顎に手を置きじっと見る。表情1つ変わらないが多分楽しんでいる。 「あんたキライ」 「なっ……なんだよ、いきなり」 千尋の形相が緩み、急に引け腰になり、一歩下がる。さすがにイキなりの嫌いは心が痛むようだ。 「やっぱりね。林の彼氏だ」 神川は更に顔をしかめ話を続ける。 「あんたがクラブに勧誘してる時、まさかとは思ったけどね。やっぱりそうなんだ。へー」 「いや、まてよ。なんで雪の事知ってんだよ」 千尋が多少キレ気味に問いかける。それを理由に自分に対し不満を持たれると千尋も平常を保てなかった。 「あら、あんな彼女のためでもなんでもしますってことかしらー?」 急にガスンという音が立つ。廊下が静まり返えるくらいに響く音。千尋が横にあった大きな傘立てを思いっ切り蹴っていた。 千尋は先程より顔をこわばらせ、さすがにヤバいと思ったのか、剣山が出る前に進藤が千尋の肩をそっと後ろに引いた。 千尋もハッとし、進藤の手を振り払う。先程までの怒りの表情は無くとも、千尋は未だに神川を睨んでいた。 「雪馬鹿にすんな。だいたいなんの関係があんだよ」 進藤がまた千尋を止めるモーションに入る。 「あら、聞いてないの?アタシ鷹見中学の生徒よ」 「鷹見?」 千尋は知らない中学の名を聞き、剣山をパッと見た。
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