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「先生、軽く半年近く吹いてないんすよ?」
千尋が苦笑いしながら経堂寺に話しかける。
「だからどうした。さっさと組み立てなさーい」
経堂寺がピンクのジャージのポケットに手を突っ込みにっこり笑う。
5人は渋々自分が吹く楽器の場所へと歩き出す。
「おっと」
経堂寺が思い出したように5人を呼びとめる。
「金管はとりあえずケースに入ってるマウスピース使って。木管はちょっと待てよー」
経堂寺が後ろにあった小さな棚をガサゴソといじる。金管楽器の三人はそのまま楽器組み立てにかかろうとするが、千尋と神川はその場で突っ立っていた。
「……あった」
経堂寺が小さな箱を2人に1つずつなげる。
「2人とも3でよかったか?」
「……はい」
経堂寺は二人に新しいリードを渡した。二人はただ呆然と箱を持つ。
「それと、はいよーっ」
経堂寺が少し固い箱を千尋に投げる。ほんとに備品の扱いが悪い先生だ。
「……セルマーのマウスピース!しかも新品っ……」
「品番はあんまりわからないけどねー」
経堂寺がまた棚を散策しはじめす。千尋はニタニタしながら楽器へと足を運んだ。
「神川にはこれこれ」
また投げる。
「クランポンだとか」
「……新品っ……!」
「ま、好きに使いなさぁい」
経堂寺はそう言うと、横にあったパイプ椅子に座り込んだ。
神川も楽器を組み立てにかかり、5人とも準備を始めた。
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