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「じゃあなんでだよー」
千尋がサックスをストラップに掛け立ち上がった。
「ちょっと思い出し事」
「思い出し笑いかよ猫ー!!」
千尋がプププーと言わんばかりのそぶりで馬鹿にしたが、進藤は顔を背けながら椅子に座った。
「今日のお前、マジで変だぞ」
剣山がチューバを床に置いて進藤の前に歩みよった。
進藤はカチリと音を立ててトロンボーンのスライドをロックした。
「お前らだって、好敵手(ライバル)の1人や2人、いただろ」
千尋と剣山は急に顔つきが真剣になった。
女子2人も此方を向く。
「いたなぁー……」
千尋が笑いながら天井を眺める。頭に浮かぶは 長原中学Alto Saxophone“跡部みずき”
結局最後はコンクールを舞台として一歩先を歩かせたまま。
千尋は色々と回想していた。
「お前のライバルって気になるな……」
「そうよー!どれくらい凄いの!?」
剣山のコメントに便乗するようにクラリネットを抱いた神川が前に出てきた。
「…………」
進藤はビックリしたように椅子の背もたれに張り付き、トロンボーンを後ろの机にそっと置いた。
「冷たい人だった」
進藤は急に立ち上がった。
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