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蕾だった桜の花が日を追う毎に咲き出す四月七日。
長いようで短かった春休みも昨日終わり、今日から二年生として新学期を迎えた。
俺、高城宗吾(たかぎ そうご)は残念なことに登校初日から遅刻ギリギリの時刻に目を覚ましてしまった。
そのまま学校をサボって寝直したい気分だが、いかんせんあいつが待っている。
俺は仕方なく眠い体を引きずって洗面所に向かい顔を洗う。
いくら暖かくなってきたと言っても朝の水道水はまだまだ刺すように冷たい。
まぁ、眠い俺にはいい眠気覚ましだけど。
それから朝飯のトーストを焼いて、さっさと食って、皿を水に浸けて朝飯終了。
この間僅か三分、我ながら最高の手際だと思う。
ちなみにアパート暮らしである俺の家には両親はいない。
一年の中頃まではいたけど突然母さんが、
『宗吾には悪いけど、当たった宝くじでお父さんと旅行に行ってくるわ。
学校があるあんたは行けなくて残念ねぇ。
じゃあねぇ~』
などと誠に楽しそうに旅行に行きやがった。
父さんは頑張って無表情を作ってたみたいだけど、幸せなオーラが端々から漏れてたから。
一応仕送りは毎月ちゃんと送られてくるけど、親としてどうなのよ。
俺は現代社会に疑問を投げ付けたいね、マジで。
そんな話はまた今度にして、俺は部屋のクローゼットから半月振りの制服を出して袖を通した。
新学年ということだしクリーニングに出しておいたお陰で糊でパリパリだ。
この感触、俺は嫌いじゃない。
多分俺だけじゃないと信じてる。
なんて遊んでる暇はない。
俺はもう一度洗面所に向かってさっさと歯を磨き、部屋に置いてある鞄を引っつかみ携帯をポケットに突っ込み家を飛び出した。
今日は入学式と始業式位だから用意なんて何もいらない!
だから形だけの鞄だ。
起床から出発まで五分でやれた俺は勲章ものだな。
とりあえずこれで遅刻はしなくてすみそうだ。
まぁ出だしは良くなかったが、今日から新学年、楽しくやっていきたいもんだな。
俺は足取りも軽やかに、多分いつものように待ってる筈のあいつの所に駆けていった。
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