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野宮先生に連れてこられたのは体育館のステージ裏、周りでは生徒会の連中が忙しそうに走り回ってる。
「お前ら二人は新入生への祝辞をやれ」
「「はい?」」
俺と咲月は同時にすっとんきょんな声を上げていた。
この人今何て言った?祝辞?
「ちょ!」
「あー…お前らに拒否権は無い。
これは決定事項だ」
「そういうのは生徒会長とかの仕事でしょうが!」
「会長はバックレた」
「他の役員にやらせれば!」
「祝辞を述べれば新入生に顔を覚えてもらえるぞ?」
「やってやろうじゃないですか!」
意見を180°反転させて野宮先生の腕をがっちりと掴む俺。
いや、露骨に嫌がらないで、担任だろ?
そんなことより、ここでいい所を見せれば新入生からの株が上がって…
「先輩……実はわたし…初めて見た時から先輩のことが…」
なんて理想的なシチュが実現するじゃねぇか!
「最低…」
なんか咲月が言ってるが気にしてられるか!
「俺がやるのはいいですけど原稿は?」
いくら会長がバックレたって言っても原稿くらいは…
「ん?時間も無いから適当にごまかしとけ」
甘かった…天津甘栗より甘かった……
「ちょっと!」
「引き受けたならやり通せ。
それと七瀬…」
咲月は野宮先生に呼ばれて端っこで何か言われてる。
あ、何か嫌そうな顔だな。
と思ったら顔が真っ赤になって、今度は意地悪な顔してる。
クルクル表情が変わるやつだな、どんな特技だよ。
と、そんなことよりも祝辞だ。
何言えばいいのかさっぱりだよコンチクショー!
「やっぱり何も考えてなかったの?」
頭を抱える俺の前にいつの間にか救いの咲月降臨!
「幼馴染のお前なら困った俺を…」
「嫌よ」
「あれぇ?」
「宗クンが全校生徒の前で恥を晒すなんて面白そうだし」
口元を緩めて楽しそうに笑う咲月。
これが小悪魔ってやつか。
つかコイツは自分の興味だけのために俺の尊厳を叩き潰す気か!?
「うん」
頷かれちゃった、グスン…
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