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『それで私を疑ってたのね…。』
ラブは少し考えた後、
『山本さん、あなたには、全ての真実を話します。』
ラブには、恋人を殺された彼女の悲しみが、痛いほど伝わっていた。
『2年前のクリスマス、私は学校の子供達に呼ばれて、ボスニアへ行きました。同じ夜に、国連組織ピースからのボスニア政府への支援金が渡されることになってたの。病院とか学校に使われるものね。』
念のために補足した。
『現地に着いた私を迎えてくれたのが、奥田さんでした。彼は国連のカメラマンとしても働いてくれていて、何度か会ったことがありました。彼は独自に、世界的な犯罪組織「ヘブン」の調査をしてたの。』
山本は、奥田から聞いた事があった。
ヘブンは、テロや紛争の影に必ずいて、武器を供給しては富を得ており、そのリーダーは未だに不明であった。
奥田は、戦争の犠牲となって死んだ大勢の人をカメラに納める度に、ヘブンへの憎しみの念を募らせていた。
『彼は私に、ボスニア政府にヘブンが武器を流していると言ったの。そしてその夜、国連との交流会に、ヘブンのメンバーも参加すると…。彼が私を迎えてくれた目的はそこでした。私も国連の一員なので、交流会に参加します。そこへ自分をアシスタントとして同席させてくれとのことでした。隠し持ったカメラで写真を撮る為にね。』
山本が冷静でいるのを確かめて、ラブは続けた。
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