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『山本さん。許してください。私が彼を連れてさえ行かなければ、殺されることはなかったはず。危険なことは分かっていたのに・・・。彼を殺したのは私です。ごめんなさい。本当にごめんなさい。』
カウンターに崩れて体を震わせている小さな背中。
そこには、いつもの冷静で、強い彼女はいなかった。
(こんな小さな体に、このコはどれだけの重荷を背負って・・・。)
山本は、そっとラブの肩を抱きしめた。
『ラブさん。もういいから。もうそんなに自分を責めないで。私はあなたを恨んだりはしない。ありがとう、話してくれてありがとう。』
他の客からは見えない位置であった。
一度だけ店員が来ようとしたが、山本が、手で制した。
10分程が過ぎた時。
店内のテレビモニターがつけられた。
局内では、臨時ニュースの際は、自動でモニターが作動するのである。
『先ほど入った事故の情報です。北海道の北北東100キロにあるロシア所有の海中施設で、大規模な爆発があった模様です。』
ラブが顔を上げる。
(そこは、確か・・・)
『この施設は、今世界中で進められている次世代エネルギー開発の拠点の一つです。現場付近には現在、台風級の低気圧があり、大しけの状況で、救助活動は難航する見込みです。日本でも、救助を巡って、たった今臨時国会が召集されました。』
『山本さん。ごめんなさい。また今度ゆっくり。局長には私から説明しておきます。安心してください。私は・・・』
『国会ね。シッカリ!みんなを助けてあげて。』
深く一礼したラブは、行きかけて、もう一度振り向いた。
『どうして、その写真をスクープしなかったの?』
山本が歩み寄ってきた。
『奥田から、あなたのことは聞いています。戦場で傷だらけになりながらも、人々を助けている写真もたくさん見ました。そんなあなたをどうしても憎めかった。この写真はあなたに預けます。絶対にヘブンをぶっ潰して!!』
『ありがとう山本さん。任せて!彼の死を絶対に無駄にはしません。』
そう言って、ラブはラウンジを出て行った。
世界の危機へ向けて・・・。
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