5.ヘブン

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『山本さん。許してください。私が彼を連れてさえ行かなければ、殺されることはなかったはず。危険なことは分かっていたのに・・・。彼を殺したのは私です。ごめんなさい。本当にごめんなさい。』 カウンターに崩れて体を震わせている小さな背中。 そこには、いつもの冷静で、強い彼女はいなかった。 (こんな小さな体に、このコはどれだけの重荷を背負って・・・。) 山本は、そっとラブの肩を抱きしめた。 『ラブさん。もういいから。もうそんなに自分を責めないで。私はあなたを恨んだりはしない。ありがとう、話してくれてありがとう。』 他の客からは見えない位置であった。 一度だけ店員が来ようとしたが、山本が、手で制した。 10分程が過ぎた時。 店内のテレビモニターがつけられた。 局内では、臨時ニュースの際は、自動でモニターが作動するのである。 『先ほど入った事故の情報です。北海道の北北東100キロにあるロシア所有の海中施設で、大規模な爆発があった模様です。』 ラブが顔を上げる。 (そこは、確か・・・) 『この施設は、今世界中で進められている次世代エネルギー開発の拠点の一つです。現場付近には現在、台風級の低気圧があり、大しけの状況で、救助活動は難航する見込みです。日本でも、救助を巡って、たった今臨時国会が召集されました。』 『山本さん。ごめんなさい。また今度ゆっくり。局長には私から説明しておきます。安心してください。私は・・・』 『国会ね。シッカリ!みんなを助けてあげて。』 深く一礼したラブは、行きかけて、もう一度振り向いた。 『どうして、その写真をスクープしなかったの?』 山本が歩み寄ってきた。 『奥田から、あなたのことは聞いています。戦場で傷だらけになりながらも、人々を助けている写真もたくさん見ました。そんなあなたをどうしても憎めかった。この写真はあなたに預けます。絶対にヘブンをぶっ潰して!!』 『ありがとう山本さん。任せて!彼の死を絶対に無駄にはしません。』 そう言って、ラブはラウンジを出て行った。 世界の危機へ向けて・・・。
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