4.世界の顔

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4.世界の顔

その日の夕方、ラブはニュース番組の特集『世界の顔』にゲストとして出演した。 メインキャスターの山本リサは、35歳独身。 数々の事件の裏に、トーイ(ラブ)の気配を感じ取っており、その正体を独自に追い続けている。 もちろん、ラブもそれには気づいていた。 『世界の顔』コーナーは、文字通り世界中で活躍する人物をスタジオに招き、その素顔に迫り、視聴者からの質問に答えてもらうコーナーであった。 プライベートな恋愛への質問や、美しさへの質問が多かったが、中にはヤクザとの交友問題やら、政治に関するシリアスなものもあった。 トークは終盤を迎え、山本が質問した。 『ラブさんと言えば、芸能界でもあらゆる賞をお取りになり、その一方で「テラ」を経営。世界中にホテルやレストランなどを持ち、経営者としても大成功されていますね。また、国連のお仕事もされ、各国の政治にもオブザーバーとして関与されています。毎年の長者番付では常に世界で三本の指に入っていますよね。』 ラブは、山本の目の変化を感じ取っていた。 『私たちでは想像もつかない巨額な富の行方について、教えてもらえますか?一部の噂では、謎の「組織」への関与や、各国の武器開発などへの投資も囁かれており、世界中のボランティア活動への参加は「隠れ蓑」ではないかとの見方もあります。いかがでしょう?』 確かに彼女については、その出生や、過去の経緯、また常人離れした身体能力に至るまで、「謎」であった。 だが、誰もがあえてそれを問いただすことは無かった。 彼女の日頃の行いや振る舞いが、例え偽善であったとしても、十分に人々を救っている事を、納得していたのである。 また、そんな彼女を多くの人は信じ、愛していた。 「噂」の第一人者は当の山本であった。
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