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そのあとユエさんは、急いでいたことを思い出しベンツへと駆けて行った。
プーになってからは、女性と会話をした覚えなんて無かったものだから、とても新鮮に感じられた。ってか、クビを切られる前からそんな記憶は無かった気がするが。
『ふわあぁああぁあ……』
パンで膨れた腹を抱え、静かな公園のベンチで温かい陽射しに照らされて……。そんな中、眠くならないはずがなかった。少し語弊があるな、暑苦しい陽射しに照らされて、に訂正。
取り敢えず襲い来る睡魔に負けると、ゴロンと横になり青く澄んだ空を眺めながらゆっくりと瞼を閉じた。蝉の声や鳥の声が聞こえなくなるのに時間はかからなかった。
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夢で見たのはこの公園じゃ。
そこでは男が一人眠っており、我は急かすようにその男を起こす。寝ぼけ眼を擦りながら男はくしゃみをする。夏の暑い日とは言え、時折の涼風に打たれ風邪をひいたのだろうな、間抜けなことだ。そして、目覚めた男は鼻を啜りつつ我に問うのだ「何をしているんだ?」と。
これはありふれた世界の中のたった一コマ。その一コマは抗えなく未来を定める。だから我は未来を変えようと骨を折る。奮闘する。気負い込む。例えそれが、意味をなしえない神々への祈りだとしても。
我は祈る。
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