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目を覚ますと、眼前には夕焼け空が拡がっていた。
眠ったのが昼過ぎと仮定しても最低四五時間は寝た計算になる。つまり爆睡したってことだな。はははは……、寝過ぎだよ。どうりで全身が軋む訳だ。
唸る頭を持ち上げると、誰かの気配を感じ隣を見た。するとそこには小学校高学年位の女の子が眠っていた。
幼くもキリッとした顔立ちからは、何と無くだがその子の性格が窺い知れる気がした。淡い栗色をした髪は頭のてっぺんでぞんざいに結ばれ、暑苦しさを誘う。服装はと言うと、奇抜な髪型に反して黒を基調とした大人っぽい服装だった。
今更だがぶっちゃけ可愛いらしい女の子だ。
パサリッ。
身体の向きを変えると何かが地面に落ちる音がした。怠い身体に鞭打ちそれを拾う。それは女物の小さめに作られた黒いシャツだった。
「うみゅう……」
思わず女の子を見る。
状況から察してこの子がかけてくれたのだろう。自分が寝てしまっては本末転倒だが。
しばらく女の子の横で起きるのを待っていたが、もう夜も近いので女の子を家に帰してやろうと声をかけてあげた。
『ねぇ、君。もうそろそろ帰らないとお家の人が心配するよ』
また「うみゅう……」と鳴き声をあげると、女の子は目を開いた。
「ん? ここはいずこじゃ?」
『公園のベンチ、うたた寝してたみたいだよ』
「そうか、寝てしまっておったか」
何か合点がいったのか一人頷く。珍妙な言葉と大袈裟な仕草が可愛らしい。
『それはそうと、こんな時間まで何をしていたんだ?』
俺が聞くとこちらをキッと睨みつけ質問で返した。
「男、風邪をひいてはおらぬか?」
『いや、おかげさまで』
手に持っていた上着を高く掲げると彼女に渡す。女の子は上着を乱暴に取り上げると、あせあせと袖を通した。その時、女の子が少しだけ笑った気がした。
「男、暇であろう。ついてこい。話はそれからだ」
女の子はそう言い放つとすたすたと歩き始めた。
こんな時間にどこへ連れていくのかと思いながら女の子を見る。迷いなくどこかへ向かうその足取りは、決して軽くはなかった。だからだろうか、俺は女の子の後をつけるように走り寄ると横に並んで歩き出していた。
その子は横目で俺を確認すると、安堵したように柔らかい笑みを零した。
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