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こうして並ぶと、どんな風に見えるだろうか? 歳の離れた兄弟? 歳の近い親子? 小学生の援交? 最後のだとヤバイな……。俺、職質くらうかも。
夕暮れの中、俺と女の子はどこかに向かい歩いていた。
別に暇だったし時間潰しにちょうどいいかな? なんて思ったりもしたが、会話がない。まぁなんだか静かなのも気が引けたので、いろいろと話し掛けてみることにした。
『えと……、君の名前は、何て言うの?』
「我か? 我は杏(アンズ)。姓を沢口(サワグチ)、名を杏と言う。男、お前は?」
『あぁ、俺は村守響。今はフリーターだね』
「ふりぃたぁ? では、今響が小脇に抱えている写真機は何だ? 飾りか? ふりぃかめらまんの間違いではないのか?」
『いや……。これは、趣味で……』
気のせいかな? 呼び捨てにされたような。
「全く、その年齢で無職とは情けない限りだな。趣味の物を抱えているということは、どうせ就職口も探してはいないのだろう?」
『まぁ、いろいろあってね……』
あれ? もしかして俺、小学生に説教くらってる?
「今のご時世、厳しいのは解るが、仕事も無いのに趣味とはいい身分だな。にぃと同然ではないのか。だいたいだ、他人に名前を聞く時は、まずは己が先に名乗るべきであろう。そこからして間違っておるぞ。愚の骨頂だ。貴様は何年間何の為に生きてきたのだ?」
少々腹も立ったが、初対面の女の子にガツンと言われて結構堪えてしまった。自分でも反省すべきことが多過ぎたせいだろうか。
『はははは……、杏ちゃんは厳しいなぁ』
なんだか、気まずいよな。全くこれだから俺は。当たり前だ、クビになったことを理由に遊んでいたんだからな。それを、こんな小さい子に諭されるなんて……。まだまだガキだな、俺も。
気付けば考え込んでいたせいか会話すらままならなくなっていた。
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