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『ひ…お助け…い、命だけは…』
部屋の片隅に追いやられ、齢五十を過ぎた男が泣き叫びながら後ずさる。男の髪は乱れ、息は荒い。
『言いたい事はそれだけか…?』
声の正体は若い男。若い男が目の前に立つと、辺りを見回す。
『お願いだ!私を殺さないでくれ!金か?金が欲しいならいくらでも払ってやるぞ!』
『生憎だが俺は依頼人からの報酬しか受け取らない…』
金をちらつかせながら命拾いを試みたが冷たく返されてしまう。男はパニックになりながら何かないか、手探りで地面を何回も触っている。
『残念だ。俺に狙われた事で既にお前の命はなかったんだよ…。それじゃあ、逝っとけ…』
男はそう言い放つと銀色に輝く銃を相手に向けると躊躇する事なく引き金を引いた。乾いた音が辺りに響き渡ると男の体が地面に崩れ落ちた。男の手から一枚のディスクが落ちた。それを見付けた男は亡きがらの側にしゃがみ込むとそのディスクを手に取り、三百六十度様々な角度からまじまじと見つめるとそれをポケットに突っ込んだ。
『これで今回の任務は完了…あとはこいつを依頼人に渡せば口座に金が振り込まれる…』
男はぶつぶつと呟きながら銀色に輝く銃を右の太股にあるホルスターにしまい込んだ。
『ふん、何をしていた奴か知らないが俺に狙われた時点でお前は終わっていたんだ…』
男は鼻を鳴らすと踵を返し、狭い部屋をあとにした。男の姿は暗く真っ暗な闇の中に消えていった。
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