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次の街も決して大きなものではなかった。しかし、あの無愛想な街ほど廃れてはおらず、建物の塗装等も新しい方だ。男は街をしばらく睨み付けるように見つめていたが街の入口ともいえる看板が見えてきた。看板には、デズセントへようこそ!と大きく飾られていた。時刻は丁度昼頃なので、街中を歩いている人は極端に少ない。
しばらくバイクを走らせていると目の前に古い石造りの建造物が見えた。この建物は銀行で常に利用客で溢れている為、男はこういった場所が嫌いなのだ。
『早く用事を済ませて宿に行くか…』
男はバイクを止めると、サイドバッグの中に銃をホルスターごとしまい込むと玄関前の階段を昇り、中に足を踏み入れた。
中はがらんと空いており、自分以外に六人しかいなかった。男は受付前に行くと、銀行員に自分の口座を開いてもらった。中をよく見ると前日の夜、男の口座の額が増えていた。どうやら、あの依頼人がちゃんと男の口座に振り込まれているか心配だったらしい。だがそれは無駄な心配に終わった。依頼人はちゃんと振り込んでいた。その額は何もせずに一年は遊べる程の額だった。
『あの男、意外と律儀なところがある。多いのは迷惑料か…』
男は口座から一万リーク引き出した。これでしばらくは生きていける筈だ。男は銀行から出るとバイクにまたがり、街中を疾走する。この街は道路がきちんと舗装されているので歩行者と接触する心配はない。
やがて目の前にある一軒のホテルが視界に現れた。ざっと見るとその建物はゆうに二十階を越えている。男はホテルの入口にバイクを止めると従業員にキーを渡した。男はホテルに足を踏み入れると部屋に直行した。
『誰だ…名前を言え…』
『やだなぁ、撃たないでおくれよ。僕は君に用事があってきたんだよ。入っておくれよ、話はそれからにしようか…』
部屋には先客がいた。頭から黒いフードを被っている為、顔ははっきり見えない。
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