自己中心的世界とエゴイズム

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「そもそも、常識とは何をもって常識とするかだ」    再び男が話し始めた。私には、この男が言う意味が理解出来なかった。抽象的すぎる。   「常識。実に曖昧で、不条理で、ご都合主義な言葉だとは思わないか? 例えば、そうだな。具体的に話をしよう。君が家から出ようとドアを開けて、そこに広がる世界は果たして、万人の目に映る共通した世界だろうか? その世界は、君が無意識の内にフィルターをかけた、主観的かつ内向的な世界ではないだろうか?」    男は背中を向けた。何かを研いでいるのか、石と刃物を擦り合わせる音がした。 「善と悪というのも怪しい物だ。立場によっては正義と悪事が逆転する。正義という言葉も、その意味の権威だけが独り歩きしている。人々は、本質的な意味を忘れてしまっている」
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