やるせない気持ち

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「別れようか――」    金曜日の深夜、タケシは電話で私にそう言ってきた。本当に、本当に突然だった。全てが順調だと思っていた。二人で夢を語り合ったりもした。    私は暫くタケシに何も言い返すことが出来なかった。頭が真っ白になった。知らず知らずの内に受話器を持つ手が震えていた。    どうしてなの、と私は言ったが返ってきた言葉は、ごめん、の一言だった。鼻先が熱くなり涙腺が緩む。嗚咽交じりの息とともに目尻から滴が零れ落ちた。    タケシと出会ったのは三年前の七月だった。大雨により駅で足止めを食らっていた時、一緒に雨宿りをしたのだ。鬱陶しく感じていた土砂降りの雨音は、出会いを祝う旋律へと変わった。私はすぐに惹かれ、デートを繰り返す内に気付いたらカップルと呼ばれる関係になっていた。    あれから二年半ほどが経過した。永遠の愛、というものは存在しないのかもしれない。    窓から外を見ると二月の寒空から季節外れの雨が降っていた。最近気温が高いせいで上空の水蒸気が氷に成りきれ無かったらしい。あの時の雨よりも穏やかで静かなのに、降り注ぐ霧のような雨は私の心を容赦なく冷やした。
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