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電源ボタンを押しても
ブラックアウトしたまま動かないケータイ
どうしようもない無力感
由姫が降りるのは次の停車駅なのだが
たったその区間の間でも
由姫の身になにかおきないか、心配でしかたない
早く、早く駅についてくれ。
そう願えば願うほど
腕時計が刻む秒針は、流れを遅めてゆく
無限のような1区間を俺は、焦るだけの気持ちで待っていた
そんな無限の区間も
時間は止まる訳じゃない
長く感じた時間も終わり、やっと駅についた
俺は、開いたドアから飛び降りて
降りた人の波から、由姫の影を捜す
「いたっ!」
改札口に程近い場所
俺との距離はたった50メートルほどなのだが
人が溢れていて追い付けそうにない
それでも、人をかきわけて、やっと改札口
少し先には由姫の背中
定期を出して改札口を抜けようとした瞬間
『乗り越しです。』
と、無情にも改札口の扉が閉じられた
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