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「はっ……はっ……」
後ろに足音、早まる足運び
なんで奴がここにいるの?
こっちには来ないはずじゃないの?
交差点の確認ミラー
背後には厚着のパーカーの男
「………。夜人っ」
私をできるだけ守るんでしょ
今、できるだけ早く来てよ
来ないのは分かってる
アイツは今、逢花ちゃんとの幸せな時間を過ごしてるだろう
だから、手に握ったケータイも
電話をかけて邪魔はできない
ただでさえ時間を奪う私が
これ以上はダメなんだ
夜人だって嫌がるに決まってる
「………う。……」
近づく足音。私も足を早めて対抗
広い交差点の点滅信号も無視して、私は走るように歩く
「夜人、夜人っ……」
気が付けば、夜人の名前を呼んでいる自分がいる
もういっそ、電話をかけてしまおうか?
いや、ダメた。アイツは逢花ちゃんのだ
私がこれ以上は時間を奪えない
それでも縋るように出てくる名前は、夜人
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