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「違う。私には夜人しか、男友達がいないからっ……!」
言い訳してみても
頭の中を巡るのは夜人で
あのフニャフニャしたような笑顔
それがあるだけで安心できる。
でも、それで現状が変わるわけもなく
依然としてついてくるパーカーの男
もうすぐ家だけど
家を知られたら、張り込みなんてされるんじゃないだろうか?
そんな思いが、私の足を違う道に向けた
なるべく大通りに出て、安全を確保したい
もう一度、駅前に戻るように仕向け
私は行き先を変えた
「……あっ、この道」
ふと気がついたのは
普段使わない道の思い出
夜人が家に来るときに
少しでも長く一緒にいたくて選んだ回り道
なんとなく、記憶の中の夜人が
私を支えてくれる気がした
そのまま歩きつづける事、十数分
支えてくれた夜人も、薄れるくらい足は疲れた
2年間履き古した革靴も
こんなに長く歩くためのものじゃないらしく足が痛い
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