たこやきの木の日

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もう一年が過ぎた 僕は西の国の王子 ボクが生涯を共にすべき姫を求めて旅に出たのが一年とちょっと前 案外、姫はさっさと見つかった ぢゃあ何で一年もこんな怪しい森に囲まれた小さな城に居着いてるかって? 答えは簡単 姫がボクを選ぼうとしないんだ ボクは聡明で顔も甘い 国も潤った豊かな土地だ 女性の扱いだって慣れたもん なのに、なんでこの女はおちないんだ 出会った時に贈った甘い愛の誓い それでもおちないから どんな高貴な王妃でも、とろける眼差しで見てしまう輝く金銀財宝を贈った それでもおちないから 城に攻めてくる、おぞましい竜も誰もが惚れる勇ましい姿で退治してやった それでも姫はおちなかった 今日も姫は花や財宝に埋められた部屋で一日中、何をするわけでもなくボ~っとしていた ボクが近くに腰掛け話しかけると、時折子猫が鳴くように笑って応えた ボクはこのせいで一年もこんな城に居着いてしまった 金銀財宝にも興味を示さない彼女が、たまに目で追いかけるもの。それが単なる流れる雲でも、ボクが摘んできた野バラにとまる何処にでもいるような蝶でも、彼女が見るものはボクには輝いて見えた。 それは、とても華麗で、どこかはかない… ボクはいつの間にか恋におちてたんだ 「ボクでは無理なんだね」 ある朝、ボクは旅立つ支度をしてから姫に部屋の入り口から話しかけた 姫はゆっくりと 「行くのですか」 とボクにきいた 「恋を知った途端、手にできない人を見ているのが苦しくなりました。それは、あなたが一生知るはずもない痛み。さようなら」 ・・・・・・・・・・ ここまでで話は終わってた この切ない恋のお話がかかれたノートはさっきVIPルームで拾った
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