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あれから二年。僕はこのところ毎日その事を思い出すようになっていた。僕が大学を出て小さな街から与えられた仕事は占い師だった。
毎日毎日お客の言ってほしそうなことを伝えた。「あなたは将来お金持ちになります」「今お付き合いされてる彼とは来年あたり結婚します」「あなたの死んだ猫は生き返ります」「あなたたちの嫌いな会社は今日戻ると跡形もなく爆発しています」
毎日毎日くだらない嘘をついた。
小さな町の中での僕の役割はそれだった。
占い師の会社の次長から「嘘が足りない」と怒鳴られた日に思った。彼女が僕より金持ちの男と浮気してるのを知った日にも思った。マックのポテトが少し冷めてふにゃってる日にも思った。赤茶色の電車に揺られてる時に思った。
マイクのほうが優美だ!
考えたら溢れ出した想いは止まらなかった。どんどん込み上げてきて気がつくと僕の体は床から1センチ程浮いていた。
次の日から僕は赤茶色の電車が迎えに来ても乗らなくなった。
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