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「おや…、あの部屋だけ光が洩れているね」
薄暗い廊下に部屋の扉の合間から室内の光が差していた。
ここにいるのだろうと判断をつけたヒノエは、そそくさと早足で部屋の前に膝をつく。
「ここにいるの…?ヒノエくん…」
「静かにしろって…今聞き耳立ててんだから……って、おい、九郎」
「っ……」
自分達から離れようとしていた九郎の服をガッチリと掴む。
「どこへ行くんだい。もう目の前だってのに」
「……だめだ…俺には勇気が出ない…。将臣がリズ先生と睦み合っていたりしたら…」
暗がりでも判るほど、九郎の表情は蒼白であった。
「往生際が悪いね…。源頼朝の弟は随分女々しいやつだったんだねえ」
「く…っ…」
ヒノエの言葉に九郎は拳を握り締めた。
「ね、ねえねえ、何か声が聞こえるよ二人共」
景時がヒノエの服の裾を引っ張る。
「どれどれ…」
ヒノエが部屋の扉に耳を当てる。
九郎も腹を決めたのか、二人に習う。
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