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「九郎、お前は強いだろ?嫁に負けるような旦那じゃあ格好悪い。だから、リズ先生に稽古つけてもらってたんだ」
「うむ。将臣の決断は固かった。だから私もそれに応じた」
「では…このところ毎晩出掛けていたのは…」
「そ。稽古のためだぜ」
ポロリポロリと、九郎の瞳から大粒の涙が溢れ出す。
それに驚いた将臣が慌てて駆け寄った。
「お、おい?何で泣くんだよ。俺、何かしちまったか?」
九郎は無言のまま首を振って違うと伝えた。
そして絞り出すような声で話し始める。
「俺は…自分が恥ずかしい……俺の為に将臣は毎夜稽古に励んでいたというのに、俺は…浮気だと疑って……」
「浮気ぃ?俺と、リズ先生がか?」
それを聞いて将臣は豪快に笑い始めた。
ヒノエもそれに釣られてクスクスと笑う。
「俺は知ってたからね。将臣から聞いてたし…。でも、面白そうだから少しからかってやったんだよ」
「ヒノエ~、お前も人が悪りぃなあ。俺の大事な嫁さんで遊ぶなよな」
「悪かったよ」
それでもヒノエは悪びれた様子もなく、楽しげに笑っていた。
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