源氏の武士、涙に暮れる

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  「あいつは…っ、あいつは本当に…っ!」   「まあまあ九郎、落ち着いてよ…」   「落ち着く!?これで落ち着けと言うのかっ!?」   景時&ヒノエ夫婦宅。   突如としてやって来た九郎の愚痴を二時間近く聞かされている景時。   ヒノエはというと、昨日から仕事でまだ帰って来ていない。   つまりは、自分一人だけで延々と九郎の愚痴に付き合わされているのだ。   「夕べ将臣が…将臣が先生と一緒に先生のマンションに入って行ったのを、俺はこの目で見たんだ!」   それから朝帰りして、また今晩、リズ先生のマンションに向かったそうだ。   そうして九郎は自らの自宅を飛び出し、ご近所さんであるここへと駆け込んだ。   同じ内容を半泣き状態の九郎にず―――っと聞かされている景時。   景時の性格上、邪険にする事も追い返す事も出来ずに、ただただ相づちを打っている。   (ヒノエくーん、僕を助けて…)   泣きたいのは景時の方であった。   と、その時、玄関の扉が開く音が響き、バタンと閉じられる。   景時は舞い上がった。   (ヒノエくんだ…!有り難い、これで助け舟が…)
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