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「……あのさ、ヒノエ君…?」
「ん?」
「何をしてるのかな、それ…」
「見りゃ判るだろ。鍵開けてるんだよ鍵を」
「いや、ね、それは見たら判るんだけどさ…」
少し体を屈めて鍵穴を凝視するヒノエ。
その先には複雑に曲げられた針金が差し込まれ、扉のロックを外そうと奮闘していた。
「お前は盗っ人か何かか…」
「煩いね九郎。誰のためにやってると思ってるんだい?」
カチッという音と共にロックが外れる。
「あ、開いちゃったよ…」
景時が苦笑ながらに呟いた。
最初は正々堂々インターホンを押して中に入れてもらおうか、という話になっていたのだが、それでは真相が確かめられない。
ひっそりと忍び込むのがいいと言い出したヒノエだった。
「ふふっ、チョロいもんだね」
針金を抜き、得意気にヒノエは笑った。
(望美ちゃ~ん、朔~。俺、とんでもない奥さんもらっちゃったよ…)
心で嘆いた景時であった。
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