夜の密会に潜入

3/6
前へ
/28ページ
次へ
  「……あのさ、ヒノエ君…?」   「ん?」   「何をしてるのかな、それ…」   「見りゃ判るだろ。鍵開けてるんだよ鍵を」   「いや、ね、それは見たら判るんだけどさ…」   少し体を屈めて鍵穴を凝視するヒノエ。 その先には複雑に曲げられた針金が差し込まれ、扉のロックを外そうと奮闘していた。   「お前は盗っ人か何かか…」   「煩いね九郎。誰のためにやってると思ってるんだい?」   カチッという音と共にロックが外れる。   「あ、開いちゃったよ…」   景時が苦笑ながらに呟いた。   最初は正々堂々インターホンを押して中に入れてもらおうか、という話になっていたのだが、それでは真相が確かめられない。 ひっそりと忍び込むのがいいと言い出したヒノエだった。   「ふふっ、チョロいもんだね」   針金を抜き、得意気にヒノエは笑った。   (望美ちゃ~ん、朔~。俺、とんでもない奥さんもらっちゃったよ…)   心で嘆いた景時であった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加