第一章 出逢い

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「懐かないの。…まあついでだから前足の怪我も見てあげるよ」 乗せていた前足に触り傷を確認すると、傷に手をかざした。 「もうすぐ治るからね」 これは私の能力の一つ、治癒。 便利だけどあまり使わない。 だって人の怪我が一日で治ったら怖いし。 こういった妖怪とか動物にしかしない。 「これでよし!」 前足の怪我は完全に治った。 「今のうちに山へお帰り」 頭を一撫でしてあげると、化猫はピョンピョン跳ねて帰っていった。 「さてと」 物置にまだ漂っている微かな妖気を祓って家の中に声をかける。 「終わりました」 声をかけると依頼人は静かに顔を覗かせた。 「もう大丈夫です」 「本当にありがとうございました」 「いえ。では失礼しますね」 会釈をしてその場を立ち去る。 家を出て走った。 近くの林か森、どこでもいい。 とりあえず人目につかない所まで。 何やら強い妖気を感じる。 この妖気を私は知ってる。 この妖気は――― 「―――どういうつもり?」 林の中の少し広い場所に出て、私は思い切り後ろを振り向いた。 「どういうつもり、とは?」 そこには昨日見た天狗がいた。 「何故私の後をつけて来たの?」 白い羽を背に、地より少し高い位置に浮遊している天狗を睨む。 「面白そうだったんでな」 は? 「お前はどうも俺の知っている退治屋とは違うようでな。観察しに来たんだ」 ……何してんだこの天狗! 「だからってなについて来てるのよ!せめて妖気ぐらい消してきなさいよ!!」 「かまわないだろ。どうせお前くらいにしか見えないのだから」 そういう問題じゃない!
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