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この地域は都心より少し田舎なためか、今も妖怪や幽霊をみることができる人が多少なりにいる。
私の家は代々こういった妖怪とかが見える家系で、妖怪退治なんかを家業にしている私としては迷惑な家だ。
昔は私の家みたいな仕事をしていた家もけっこうあったみたいだけど、時代のせいか何のせいか見えなくなった人が増え、妖怪も山に帰ってしまったりで仕事をする家が激減して、この地域では私の家だけ。
神谷の家の本家は青森の山の奥にある。
私が今住んでいるのは各地にある神谷の家の分家。
私の家は代々女系で、毎度女が当主になる。
今は私の母が当主。
私は一人前ではあるけど、当主ではないからまだ修行中の身。
だからいろんな所に駆り出されてるわけ。
別にいいけど。
今は地主の家の蔵の妖怪退治。
「雅様、こちらです」
【雅】と言うのは私のこと。
依頼を受けるところは私の家の分家の分家っぽい所。
人は住んでいないので、使役している霊や妖怪、式神なんかが各地の仕事を割り振っている。
会社名みたいなのがあってそれが【幽界返還所】。
そこにきた依頼を私が受けるんだけど、いつの頃からか依頼人たちは私の事を【雅様】と呼ぶようになった。
名前の由来はわからない。
私としてもいちいち「神谷麻柚です」と名乗るのも面倒なのでそのままにしている。
「雅様、よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げられるので、仕方なく蔵の中を覗く。
「あ」
暗闇のせいではっきりとは見えないが、小さなネズミみたいなモノたちがツボの周りにいる。
「ここから中へは、私が良いと言うまで入ってはいけませんよ」
「は、はい」
地主の周りに何人か集まった人たちを見渡してから、私は蔵の中へと入っていった。
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