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子供は優しく、無垢で残酷だなぁ。
私はしっかりとその男の子に向かって歩き、目の前で屈んだ。
「殺すと言う言葉を簡単に使ってはいけないよ」
「なんで?殺されてとーぜんでも?」
「殺されて当然の生き物なんていないのよ」
「え?」
男の子はわからないと首を傾げる。
「君に命があるように、妖怪にも命があるの。それを簡単に奪っちゃいけないわ」
「?」
「妖怪は今住む場所が少ないの。だからこんな所まで来なくちゃいけないの」
「なんで住む場所が少ないの?」
「私達のせいだよ」
「なんで?」
私は苦笑いしかできなかった。
「ご飯を食べたくていろんな所でお米を作るの。でもそこは妖怪たちの住みかだったりが多いの。君には見えないかも知れないけど、見えないからって何をしても言い訳じゃない」
私は息を一つついた。
「だから、仕方なく人里に下りてきてしまった妖怪を簡単に殺してはいけないわ。物を壊したくらいで、君だって殺されたくないでしょ?」
「うん」
「それとおんなじ。優しくしてあげて。本当に可哀想なのは妖怪たちだと思うから」
「………」
「………。じゃあね」
納得したようなしてないような顔をしたその子に少し笑ってから私はその家を後にした。
まあぶっちゃけ、私の仕事は、毎度こんな感じだ。
しかし、蔵に残されたと言う紋章が少し気がかりだ。
あんな低級な妖怪が、紋章なんかを刻んでいくはずがないから……。
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