第一章 出逢い

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今は春。 桜が咲いて、パラパラと舞っている。 今日はお祓いを頼まれて遠出をしてきた。 電車を乗り継ぎさらに田舎へ来て、神社の前にたどり着いた。 「この石像に妖怪が取り憑いているのでごさいます。雅様、どうかよろしくお願いします」 深々と頭を下げる神主は、遠いと言うのにわざわざ私を呼んだと言うことは、さぞお困りなのだろう。 顔色があまり良くない。 気力でも吸い取られているのかも知れない。 なんにしても、急いだ方がいいかも。 「わかりました。神主様はご自宅にお戻りください。危なくなるといけませんので」 「申し訳ありますん。よろしくお願いします。失礼します」 神主は私に丁寧に頭を下げてその場を立ち去った。 石像に向き直り、睨みつける。 「出てきなさいよ、狐」 キューと言う音をたてながら狐が姿を現した。 「神じゃないわね。ここのお稲荷様でもないようだし。何者?ただの化狐?」 先程から威嚇をしているんだろうけどキューキューとしか鳴かない。 言葉を持たないと言うことは低級か。 妖怪は言葉を持つ、と言うか話せるモノと話せないモノがいる。 話せるモノは中級以上。 上級や高貴なモノの中には言葉を操る妖怪もいる。 最近人里に下りてくる妖怪は低級が多い。 この化狐もその一匹なんだろう。 「素直に山へ帰りなさい。そうすれば手荒なマネはしないわ」 威嚇は一向に解かれない。 「仕方ないか」 ため息混じりにそう言うと、私はその場で険印を結ぶ。
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