第一章 出逢い

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「我を守りし108の霊魂よ 幽界より迷いし彼のモノを在るべき場所へ」 神谷の家に古くから伝わる祈祷を唱える。 まずは石像から引き剥がさないと。 「霊(クシ)びなりこのモノを 弾け」 狐がけたたましく鳴き石像から離れた。 「山に素直に帰るか、私に退治される?」 背中の毛を逆立てながら睨みつけてくる狐を無視して不敵に笑ってやる。 しかし狐は高く飛び再び石像に入ろうとした。 でもそれは叶わなかった。 「残念。それには護符を貼り付けておきました」 笑っている私に向かって狐はすごいスピードで向かってくる。 「幽界よ 今こそその門を開き 彼のモノを還せ 開」 私の前に光の大きな球のようなものが現れ、狐を中へ連れて行った。 「ふぅ。こんなもんかな」 辺りを見渡し狐の妖気を探す。 もうここにはいない。 幽界の門と言っても少し思考を変えて近くの山に門の出口を設定する。 幽界は死者の霊や危険な妖怪を閉じ込める言わば地獄みたいな所。 そんな所に化狐ごときを入れてしまったら可哀想すぎる。 だから近くの山。 祈祷や呪文はおまけ。 なんなら何も喋らなくてもいい。 そんな曖昧なものだから、あまり重要視はしていない。 私は髪を結んでいた紐を取って神主の家へと向かった。 念のために神社の所々、見えない所に護符を貼っていった。
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