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キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、帰る支度をしていると、後ろから声を掛けられた。
振り返ると昨日一緒に帰った仁美だった。
「望美。今日も一緒に帰ろう!」
「ごめん。今日はちょっと用事があるんだ」
「そっかぁ。じゃあ仕方ないね。また明日ね」
望美は少し仁美に対して悪いかと思ったが、学校の雰囲気にまだ慣れていないのか、居にくい空気を感じるような気がする。
交差点で信号待ちしていると、いろんな人に目が行く。
スーツを着たサラリーマン、髪を金髪に染めた女子高生、杖を突いているおじいさん。
果たしてみんな、今いる場所が好きなんだろうか。
そんなことを考えているうちに、歩行者用の信号が青に変わって、みんな横断歩道を渡り始めている。
それでも望美は、考え事に夢中で信号が変わったことに気付かない。
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