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それから、どれだけの時間が経ったのだろう?
遠くの方で救急車のサイレンが聞こえて、それと同時に別のサイレンが聞こえる。
(あぁ……。パトカーだ。きっと誰かが呼んだんだ)
救急車が到着し、隊員の人が二人降りて血まみれの女の子を救急車の中へと運んでいった。
しかし、そんな光景も勇夫は気付いていない。ずっとしゃがみこんだまま。
程なくしてパトカーも到着した。
そして、警官の一人が勇夫へと歩み寄ってきた。
「この中の野次馬の一人から通報があったので、来ました。
あなたで間違いありませんか?」
その声がする方に顔をあげ黙って頷いた。
「名前と住所、それから、年齢、職業は?」
「大西勇夫です。千葉県千葉市に住んでいます。
歳は36。
職場は自動車の製造業です」
警官は勇夫の手に手錠を掛け立ち上がらせると、パトカーへと連行しようとした。
だか、何を躊躇うのか、勇夫はパトカーに乗ろうとはせず、立ち止まった。
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