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ひととおり泣き終えた咲羅は紅に支えられながら学校にむかった。
すでに授業ははじまっていたため保健室で休むことにした。
紅は事情を聞こうともせず、静かに咲羅のそばにいる。
桜呂も、紅には見えないだろうが、咲羅のそばにいた。
『咲羅さん…』
いつの間に名前を知ったとか、なんで軽々しく呼ぶのかとか、言いたいことはたくさんあったものの咲羅は黙って目を閉じた。
桜呂が名前を呼ぶとすごく落ち着いていく。
「じゃぁ私先に教室行くから落ち着いたら戻っておいで」
「うん。ありがとう、紅ちゃん」
紅は軽く笑えば咲羅に手を振って教室に戻っていった。
保健室に残されたのは咲羅と桜呂のみだ。
桜呂は静かに咲羅のそばに立っていた。
声をかけるわけでもなければ、優しくなでるわけでもない。
男だったら慰めることぐらいしろ、と咲羅は考えるのだが今は静かにそばにいてくれるだけでよかった。
『咲羅さん…』
しばらくしてからまた桜呂が名を呼んだ。
のろのろと顔を上げれば、桜呂はそっと咲羅の前にひざをつく。
『私ではだめですか』
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